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| ACCUMU Vol.9 1999 |
| 創立35周年記念 巻頭特集 |
京都コンピュータ学院 学院長
長谷川 靖子 Yasuko Hasegawa
京都コンピュータ学院は,今年創立35周年を迎えました。この記念すべき年にあたり,35年の歴史を振り返りながら,本学院のアイデンティティを再確認したく存じます。創立当初は,コンピュータの幕開け時代でした。当時は,行政においても,大学においても,コンピュータを学術部門,ビジネスの特殊部門の道具と考え,一握りの専門家で充分だと認識しており,またそれが社会全体の常識でもありました。しかし,私達は,コンピュータの特性から,来るべき情報化社会を予見し,大量のソフトウェア技術者養成の必要性を痛感し,全国の大学に先駆けてコンピュータ教育をスタートさせたのでした。自ら進んで,時代を担っていこうという教育革新への情熱,情報教育普及の使命感が創立の原点にあったのです。これらは,学院のアイデンティティとして次々と発揚されていきます。
ここ数年の間のインターネットの浸透は凄まじいの一語に尽きます。世界各国において急速なコンピュータ・リテラシー教育が普及し始めました。コンピュータはスペシャルな領域のものでなく,誰もの生活の中に浸透する文化なのだという認識は今では通説になっています。
しかし,はじめに申しましたように,35年前,学院創立の頃は,行政の間でも大学の間でも,コンピュータはスペシャルな領域のものだとする認識が圧倒的でした。その頃から,本学院はコンピュータを文化として捉え続けてきました。そして,その信条の下,コンピュータ技術教育と共にコンピュータ・リテラシー教育普及の必要性を,各国教育省に説得しました。単なる技術指導にとどまらず,支援対象国の教育省に対して,コンピュータ教育に対する認識の変革を促し,広域の層に対するリテラシーとしてのコンピュータ教育の実現をサポートした点で,本学院の海外コンピュータ教育支援活動は,明日の時代へと向かう,より重大な意義を持つ国際貢献でした。
インターネットによる情報スーパーハイウェイは,世界各国が合流参加してこそ,よりパーフェクトな効果をあげ得るものです。現在,実現され,また考えられている様々なインターネット利用効果の中で,私が最も大きく期待するのは,インターネットによる全世界,全民族の発言の自由性がもたらすであろう真の平等な民主主義社会の実現です。おそらく21世紀,インターネットのグローバルな普及浸透は,国家間の垣根を取り壊し,大国主義を排除し,世界平等の真の民主主義を,ボトム・アップの力学において達成させるでしょう。
私達は,ここに,創立35周年を迎えて,過去9年間,本学院が途上国に対して行ってきたコンピュータ・リテラシー教育の普及活動を,より今日的な意義において再確認すると同時に,このコンピュータ教育普及に対する使命感を学院精神のアイデンティティとして,今後も継承,熟成させていこうと固く決意いたしております。
そして,今年35周年を記念して,マラウイ共和国への支援,ケニア共和国第二次支援とスリランカ民主社会主義共和国第二次支援が発足しました。今回は同志社国際中学校・高等学校との合同支援が特徴で,寄贈パソコン合計450台の中,windows型70台が同志社国際中学校・高等学校よりの寄贈です。
これまで,9年間,海外コンピュータ教育支援は本学院単独で行われてきましたが,今回初めて他の教育機関との合同が実現し,私達は喜びに堪えません。これを機に,より支援の輪が拡がっていくことを祈念いたします。
さて,情報教育における時代の新潮流への対応として,近年特に重要なのは,本学院とアメリカ・ニューヨーク州・ロチェスター工科大学(R・I・T)との関係です。
1990年代前半,マルチメディアの急速な発展の流れに対し,学院は教育上の新たな対応を迫られることになりました。
当時,マルチメディアにおいては日米間に10年の開きがあるといわれていましたが,私達はその差は,日米の社会的背景の差異にその要因があると分析しました。多民族国家,多重文化混在のアメリカこそマルチメディア文化の土壌であると判断し,アメリカ・マルチメディア文化土壌の学院への移植醸成を考えたのです。そしてプラグマティズム教育で著名なR・I・Tをフォーカスし,R・I・T教授陣のサポートの下,1994年以降,アート系,メディア系の学科を誕生させました。学内的にはR・I・T出身者達を加えて,教員構成を充実させ,毎夏のR・I・Tでの学生の研修,またR・I・T教授による集中講義などを実施しております。1996年3月,本学院とR・I・Tの間で姉妹校提携が実現しました。アメリカ名門大学と,日本の専修学校との姉妹校提携は,日本では前例がありません。
その後,R・I・Tと本学院との関係はより発展し,今年,本学院の創立35周年記念事業の一環として,R・I・T大学院と本学院との教育合同プロジェクト発足を見るに至りました。これは,日本の大学卒業者を対象に,R・I・T大学院コンピュータ関連二学科の修士課程を前半は本学院で,後半はアメリカR・I・Tで仕上げるというプログラムです。
周知の如く,日本はハードウェア技術においては世界のトップに位置していながら,ソフトウェア技術においては,どうしてもアメリカに追いついていません。さらに,情報化時代に対応した,企業におけるプロジェクト・チームのリーダーとしての人材欠如が深刻です。この合同プログラムによる教育が,高度情報化時代にむけて,従来の日本の教育に欠落していた部分を補い,日本情報教育界へ一陣の新風を送ることを私達は願っております。このプログラムは,本年4月よりスタートしました。もちろん日本で初めての試みであり,画期的なプログラムとして,種々マスコミで大きく取り上げられました。以上の他,大学と本学院との姉妹提携は,中国北京,天津,西安の三大学に対しても展開されています。さらに前述支援対象国の教育省と本学院の間に,友好関係がすでに締結されており,本学院の国際教育ネットワークは,インターネット時代,一層の充実と発展を見ることでしょう。
最後に,少子化現象による専修学校サバイバルの動向に関して言及したく存じます。
不況が続き,さらに少子化現象が深刻な中,金融ビッグバンに続く教育ビッグバンは,どのような形で起こるのでしょうか。短大はもう既に凋落の一途をたどっております。大学も生き残りをかけて学生募集に懸命です。先日,専修学校から大学への編入が法的に認められるようになりました。これを学生数激減の大学への救済策と受けとめている大学も多いようです。しかし,専修学校から大学への編入を認める法令は,大学の少子化救済策でなく,日本の教育変革の一環としての深い内容をはらんだものと私達は推察しております。
工業化社会においては,偏差値教育,画一教育が文教政策としてとられました。この教育は,確かに日本経済の発展に大きく貢献しましたが,21世紀高度情報化社会では,この教育はむしろ反対の効果を生みます。日本の社会は,教育の大きな変革を必要としているのです。
画一主義教育の時代は,中央集権的文教政策に従って,私立といえども,国庫補助金助成の下,国公立と同じ道どりで進むことを余儀なく強いられました。そのような中で,行政に保護され,行政に依存し,何のアイデンティティも築かなかったような大学は,レジャーランドと化していきました。「レジャーランド大学」は,変革の時代の担い手となる人材を輩出する力を持ち得ません。今,時代は優秀な人材のバラエティを求めて,教育の個性化を要請し,しかも,データ上では少子化現象が明確です。
ユニークな本物の専修学校から大学への編入の流れをつくり,個性なき大学の活性化をはかり,かつ,アイデンティティの確立も疑われるレジャーランドの大学には,補助金を削減し,縮小整理していくというところに,文部行政の真意があるのではないでしょうか。例え,行政に100%その意図がなくとも,歴史の趨勢として本物の教育が残り,レジャーランドは教育界から消えていくのは必定です。専修学校の学生は,決してレジャーランドの大学には編入しないでしょう。現実に,本学院へはレジャーランドの大学を見限って,再入学した学生がすでに1割に達しています。本物の専修学校は,経済的に自立し,また自らのアイデンティティにおいて,理念的にも自立しています。どの分野においても,どの時代においても「本物は強い」のです。「本物は勝つ」のです。
現在,日本の業界は不況の嵐の中であえいでいます。その中で世界的シェアを掌握し,高収益を上げているのは,京都の企業群です。京セラ,村田製作所,ローム,任天堂,三洋化成工業,堀場製作所等が列挙されます。これら企業の元気の良さの理由として,「京都の持つ風土的な革新性だ」とか「京都企業には規模でなく質を追う本物主義の伝統があるからだ」,あるいは「社会のニーズに対する洞察性だ」といわれています。さらに,千年以上も,京都は日本文化発信の地でもありました。本学院の情報教育における革新性,先駆性,規模でなく質を追う教育における本物主義,時代的ビジョンと社会のニーズの的確な掌握と対応性,情報文化発信の使命感,学院アイデンティティであるこれらすべてにおいて,本学院は『京都』そのものを象徴する学校です。少子化現象と教育ビッグバンの中で,私達学院としても大きな危機感を持っています。しかし,こうして過去の歴史を振り返り,学院のアイデンティティを確認すれば,未来が見えてくるではありませんか。元気ある京都企業と同様に,時代を超えて本学院は発展し続けると確信いたします。
振り返れば35年間,「わが歩む前に道なし,わが歩みし後に道ができる」という創造者の歩みでした。そして,今なお,私達はより高い頂上を目指します。
長い道程の中で,私達は文部省,京都府文教課,大学,企業,そして京都市民達の心温まるご支援,ご激励をいただきました。心から感謝申しあげます。
35年の間に送り出した卒業生3万3千人あまりの活躍は,私達に,何ものにも替え難い喜びと励ましを与えるものでした。
学生の皆さん,皆さんの肩に日本の将来はかかっております。先輩達に続いて,時代を担う技術者として,「技術立国日本」を再び,日出づる国にしていこうではありませんか。
最後になりましたが,本日,外部からご列席くださいました皆々様,本学院の今後の輝かしい発展に,変わらぬご協力をくださいますようお願い申し上げます。

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Revised:March 3,2000
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