左は高校の古文の教科書にも載っている大鏡の中の有名な件です。ころは平安中期,天文博士でまた比類なき陰陽師である安倍晴明が「帝の退位を示ような天変があったが,事は既に終わってしまったようだ。」と叫びました。寛和二年六月二十二日(現行暦では986年8月5日)の夜,花山帝は藤原道兼(道長の兄)にだまされて退位・出家してしまうのですが,御所から花山寺に行く途中,晴明の家の前を通った時にその声を聞いたと記されています。帝の退位を示す天変とは,一体何だったのでしょう?
その謎を解く鍵は晴明が叫んだ時刻です。大鏡のもう少し前を読んでみると,帝が御所を出ようとしたときに
有明の月のいみじう明りければ・・・月の顔にむら雲のかかりて・・・
から出発したと書かれています。旧暦22日ですからほぼ下弦の月,月の出は真夜中の12時前,東山から月が現れるのはそれより後,その時は煌々たる月明かりだった。暫くして月にむら雲がかってから帝が御所を出たのですから,晴明の叫びは多分2時過ぎでしょう。木星はとっくに沈んでいます。なぜ晴明は3〜4時間も経ってから奏上せねばと言ったのでしょうか??
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