975年の皆既日食

 『日本紀略六』に天延三年七月一日(=975年8月10日)に起こった日食の記録があります。空が墨のように暗くなり,多数の星が見え,鳥が乱れ飛んだというもので,皆既日食です。朝廷ではこのために大赦を行っています。白昼日が隠れるということはそれほどまでに忌々しき大事件だったのです。

 右図はこの日の日食図で皆既帯は中国・近畿・中部・関東まで広い範囲にわたっています。京都では6時52分に始り,7時55分〜58分の間皆既が見られたはずです。 わが国最初の日食の記録は推古36年(628年)のものですが,皆既日食の記録はこれが初めてです。天文博士に任じられて間もない54歳の晴明は実際に観測して,上左の文書の元になる報告書を書いたのではないでしょうか。
 なお日本紀略六の文章は古事類苑トップより,また日食図は 日食・月食情報データベースより作成しました。
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