宇宙の膨張


 宇宙論を初めて数理科学的に取り組んだのはもちろんEinsteinである。一般相対論, 4次元時空のテンソル方程式は一様等方,圧力なしの条件で 運動方程式は
    a’’=−GM/a2+Λc2a/3         @
そのエネルギー積分は
    a'=2GM/a+Λca2/3−kc2              
           
=(8πGρ+Λc)a2/3−kc

              
=(A/a+Λa/3−k)c2             A
と記される。ただし
a・・・宇宙のScaleFactor  ' は時間微分
Λ・・・宇宙定数
k・・・曲率パラメータ   −1なら open, 1なら close,  0 なら flat。
A=2GM/c=8πGρa3/(3c2)  とする。 constant
@の第1項は重力で第2項は宇宙力である。 Aの初めの2項はポテンシアルU(a)を−2倍したもので,第3項は全エネルギーの2倍である。

Λ=0 のとき Freedmannの解  Aの解は   
    k=0       a=(9A/4)1/3(ct)2/3
   k=1    a=(1−cosξ)A/2    ct=(ξーsinξ)A/2 ・・・  Cycloid   いつかは収縮
   k=−1  a=(coshξ−1)A/2   ct=(sinhξ−ξ)A/2
  A=0 (空の宇宙),k=−1の場合には a は t に比例する  Milneの解 

Λ≠0 のときは宇宙斥力が生じ膨張は加速される.。もともと宇宙力とは Einstein が a=const(定常) k=1(有限) とするために重力とつりあわせるため,導入したものだ。このとき@の左辺=0,かつAの左辺=0,したがって
  Λ=4πGρ/c(これを ΛE とする)   a=1/ΛE (この a を aE とする)
さらに A=2aE/3  である。なお Einstein の宇宙は dU/da=0 ,すなわちポテンシアル頂上の場合である。 
この aE と ΛE を使ってAを書き直そう。
   a'2=[2aE/(3a)+(Λ/ΛE)(a/aE2/3−k] c2  
 
さらに p=Λ/ΛE, y=a/aE とすると   
   y'2=[2/(3y)+py2/3−k](c/aE2    B
c/aE=1とし,宇宙力の強さはパラメータ p にさまざまな値を与えて,Bを数値的に解く。
結果は k=1かつ p ≦1の時(すなわち閉じた空間で宇宙力の弱いとき)以外は膨張がやむことはない。k=1で p=1のとき,a は漸近的に有限値に収束する。その値は Einstein の宇宙半径 aEである。k=1で p>1のとき,a は aE あたりで一時膨張速度は低下するが再び急増する。(LeMaitre宇宙)。 なお A=0 の場合は deSitter の解(指数関数的急膨張)に,また p = 0 の場合は上記 Freedmann の解に移行する。  Size-Timeの計算結果
        岩波講座 現代物理学の基礎12「宇宙物理学」第9章より    

     a'/a=H ・・・Hubble定数   ρ=3H2/(8πG) ・・・臨界密度 を定義し
     Ω=ρ/ρ=8πGρ/(3H2)   λ=Λc2/(3H2)  κ=k(c/aH)2 とおけばBは
           Ω+λ−κ=1 
また λ/Ω 比を計算すると Λ/ΛE(=p) の半分である。
現在観測値は Ω〜0.3, λ〜0.7, κ=0 と推定されていて,p〜5にあたり宇宙力が重力に勝っている(加速膨張中)。