てんびん (Libra)
正義度を測る天秤


かつてこの地上は,山には穀物や果物が実り,川にはミルクや酒が流れ,人間は農作しなくてもいつも満ち足りて,何不自由なく暮らしていました。また正義と信仰がいきわたり,権力を振り回す者もいなく,法律なんてものも不要でした。神々はこの世で人々と一緒に暮らしていました。このような平和で平等な時代は「金の時代」といわれています。ところが時はうつり「銀の時代」「銅の時代」「鉄の時代」となるにつれ,人間は互いに武器を持って,大地を取り合う醜い争いを繰り返すようになりました。これを見てうんざりした神々は次第に天へ引き上げてしまいましたが,ただひとりこの世に留まった神がいました。その名はアストレア,ゼウスの娘,正義の女神です。彼女は人々に正義を説き,悪を退け,悩めるものを救ってまわりました。そのとき人間の正義を測るため使われた道具が天秤です。しかし,そのアストレアさえもついに人間社会の悪にあいそをつかして天に去っていってしまいました。人間は最後の神さえ追い出してしまい,この大地をわがもの顔で私物化しています。