PC天文教材【2】  ケプラーの法則の理解  【3】
作花一志 「天文教育」 9月号 2005   

1. ケプラーの法則
 天文屋ならだれでも知っているケプラーの法則だが,これをきちんと説明するのは非常に難しい。
T)惑星は太陽を一つの焦点とする楕円軌道を描く。
U)太陽と惑星を結ぶ線分と楕円の長軸とでできる扇形の面積速度は一定である。
V)どんな惑星でも公転周期の2乗と軌道長半径の3乗の比は一定である。
という文章だけで内容を理解することは無理に近いし,この件を暗記してもほとんど無意味である。 まず,第1法則において楕円とは
    x2/a2+y2/b2=1
という式で表される曲線というより「円をある一方向だけに圧縮したもの」と考えたほうがわかりやすい。半径 a の円を y方向だけに b/a 倍すると長半径 a,短半径 b の楕円が得られる。楕円の形は a と b という代わりに,a と離心率 e=√(a2−b2)/a とで特徴づけられるとする(右図)。 eは0以上1より小さい値をとり,0のときには円を,1に近くなればなるほど扁平な楕円を表すことは容易にわかる。楕円の焦点は(±ae,0)であり,第1法則より太陽は一つの焦点S(ae,0)に,惑星は楕円上P(X,Y)に位置している。原点を中心とし半径aの円を描き,その円周上にP'を図のように定めて∠P'OX=Eを離心近点角という。

  X = a cos E         (1)
    Y = b sin E
    = a√(1−e) sin E  (2)  
すると太陽惑星間距離SPは
   r =√((X − ae) + Y)
      = a ( 1 − e cos E)  (3)
と書ける。rの最大値,最小値は次のように与えられる。
   最小値 a(1−e) E=0゜     PがAに一致するとき
   最大値 a(1+e) E=180゜   PがA'に一致するとき
Aを近日点,A'を遠日点と呼ぶ訳は自明であろう。a は r の最大値と最小値の平均となるので平均距離とも言われる。惑星が楕円上をどのように運動し,いつどこにいるか次のケプラーの方程式(4)で与えられる。これは第2法則「面積速度は一定」から得られるが,その導出にはかなりの忍耐力が要る。純力学的な表現では「角運動量が保存されている」となる。

  E −e sin E = M      (4)
   M = n t        (5)
M は平均近点離角と言われ,近日点通過時からの経過日数tに比例し,近日点通過時に0,遠日点通過時に
πとなる。ケプラーの方程式の解は
     y= e sin x 
     y=x −M 
の交点であり、0≦e<1であるから必ず解は1個だけ存在する。しかし解析的には解けないので、M(ラジアン)と e を与えて数値的に解くわけだ。求まったEを(1),(2)に代入してX,Yが求まり,その時の惑星の位置が得られる。 第1,第2法則は1つの惑星についてであるが第3法則は複数個の惑星についての記述である。公転周期 p と平均距離 a の関係は
     a3GM p2/(4π2)      (6)
Mは太陽と惑星の質量和であるが太陽の質量として差し支えない。p,a,M の単位を年,天文単位,太陽質量とすると,第3法則は次のように非常に簡単に表される。
     a3=p2
(5)の比例定数nは平均日々運動といわれ惑星が1日当たり公転運動する角度で平均角速度に当たる。
      n = 360/(365.24219p)
       = 0.985647365 a−1.5
と書ける。太陽に近い惑星ほどnは大きく,速く公転している。

2.例題と解法
 ではこれらをパソコンで実習してみようといっても,まず楕円を描くことからして大変である。(1)(2)において a と e の数値を与えて(X,Y)をプロットすればいいのだがExcelでやろうとすると楕円の形は正確ではない。ケプラーの方程式(4)の解法は数値計算の初歩的な演習問題で、Excelで解けるが,その後のグラフ描画は大変だ。それならいっそ全部を満たすプログラムを作ればいいのだが,長時間の試行錯誤を覚悟しなければならない。そこで必要に応じて筆者のサイト[1]より実行ファイルをダウンロードしてお使いください。3つの法則をビジュアルに理解しようというもので,図2は第2法則についての図説である。惑星(赤玉)が太陽に近いときは速く,遠いときはゆっくりと軌道上を運動する。
ここではExcelでできる2つの例題を解いてみよう。

例1 今年元日の地球太陽間距離を求めよ。また今年の近日点通過日と遠日点通過日を求めよ。
 理科年表によると地球の軌道要素は
   a=1, e=0.00167 
であり2005年8月18.0日においてM=223.429°である。1月1日は229日前であるから,元日では
M=-2.284°となる(下図左)。なお時刻はUT=0hすなわちJST=9hにおける値である。 このMをラジアンに変換(関数radians)して(4)を解くと
   E=−0.04054 であり
   X=0.982478183  Y=−0.040527772   r=0.983313724  が得られる(下表)。
ここではニュートン法を用いて x2=x1−f(x1)/f'(x1) と計算した。
ただし f(x)=x−esinx+M     f'(x)=1−ecosx
Mの値が0に近いので,元日に地球は近日点の近傍にいるはずだ。下図左のシートにおいて1月3日には M=−0.313°で、1月4日には M=0.0117°であるから近日点通過日は1月4日であることがわかる。同様にして M=180°となる日を探すと,遠日点通過日は7月5日であることがわかる。
 

例2 木星と天王星の衛星の軌道長半径と公転周期の対数グラフを描け。それぞれ直線状に並ぶが,その勾配と切片の意味を考察せよ。
 [2] に載っている木星62個,天王星24個の衛星の軌道長半径 a (km)と公転周期 p (day)のデータを使いその対数をプロットした。 点列が直線状に並ぶということは
     p=C×aα
ということを意味する。αはこの直線の傾きで1.5であり(6)と一致する。また切片は
     C=10-8.1964=6.36209E-09(木星)
      =10-7.5241=2.99158E-08(天王星)
であるが(6)より C=2π/√(GM)であるはずだ。実際,両惑星の1/Cの比は0.045であり質量比と一致する。このようにして,火星から海王星までの質量比が求まる。

参考文献
[1] 作花一志 http://www.kcg.ac.jp/kcg/sakka/uchu/c/sample/kepler.exe
[2] JPL http://ssd.jpl.nasa.gov/