やぎ (Capricorn)
牧神の失敗


牧神パンは山羊の姿をしていて,アルカディアの野山に住み羊飼いと仲良しで,彼らに葦笛の吹き方や踊りを教えました。パンはかってシュリンクスというニンフにかなわぬ恋をしたことがあります。パンはシュリンクスを追いかけますが,彼女は嫌がって逃げまわります。川のほとりに追いつめられた彼女は仲間の助けを借りてやっとのこと逃げ出せました。そこへ追ってきたパンが,捕まえてシュリンクスと思ってかき抱いたものはなんと1本の葦っだたのです。パンはため息を漏らしますが,その息は葦の中に入り美しい音色を奏でました。そこでパンはこの葦から笛を作りシュリンクスと名づけ,やがて葦笛の名手になりました。
 ある日仲間の神々とナイルの川辺で酒盛りをしていると,怪物デュフォンが現れたので,みんなそれぞれ川に逃げました。パンも魚に変身して川に飛び込みましたが,慌てたため上半身はやぎのままでした。そのためパンは半山羊半魚として描かれています。凄惨な話の多いギリシア神話の中では愉快な例外です。牧神パンは後世の芸術家から愛され,ドビュッシーも有名な前奏曲を作曲しています。