ところで桜と言えば
さくら さくら
弥生の空は 見渡すかぎり
霞か雲か 匂いぞ出づる
いざや いざや 見にゆかん
この歌は明治からずっと小学校で歌われてきていますが,3月弥生に桜が満開ということに違和感はなかったのでしょうか?3月のうちに桜が咲くようになったのは,近年の温暖化のせいであり,桜の花の見ごろは4月の入学式のころですね。弥生は現行暦では4月上旬〜5月上旬ですから桜花満開にちょうどいころです。
このように季節感と合わない例はまだまだたくさんあります。
「さつき晴れ」からは5月のさわやかな晴天のことを想い浮かべますがでは,実は皐月はまるまる梅雨の月なのです。「さつき晴れ」とは鬱陶しい梅雨の合間の晴れの日を表した言葉で,五月雨(さみだれ)とはまさに梅雨です。6月は水無月,水がない6月なんて変ですね。水無月は梅雨が明けた後のからりとした夏です。
7月7日の七夕については別項をご覧ください。9月9日は重陽の節句ですが,実際にはまだ残暑厳しいころで,菊はまだ咲いていません。12月師走になると学期末で先生は忙しく走り回るとか言われたものですが,これも1ケ月余りズレています。師走とは現在で言うと1月〜2月で,それこそ生徒の進路,入試結果の明暗などで教師にとって最も忙しいころかもしれません。
赤穂浪士の討ち入りの夜は大雪だったそうで,元禄十五年十二月十四日=1703年1月30日のことです。1年で最も寒いころ,大雪の夜というのも理解できます。なお松の廊下事件の起こったのは元禄十四年三月十四日,現行暦では4月21日です。
このように考えると旧暦は不合理で実生活には不便といわれていますが,なかなか味わい深いものです。