世界で初めてノート型PCを開発した溝口さんが講演「大志を抱きチャレンジを」

溝口さん

世界で初めてとなるノート型PC「ダイナブック」の開発を手掛けた株式会社 東芝の元専務・溝口哲也さんの講演会が12月18日,KCG京都駅前校6階大ホールで開かれました。溝口さんはノート型PCの開発に至る経緯を,思い出話を織り交ぜながら紹介,聴講した学生に向け「一流の技術者とは研究,開発,製品化,商品化,収益確保の5つのステップを全うする人」と説明したうえで「人間はみなダイヤモンドの原石。大志を抱き,自分自身を磨きながら目標に向けてチャレンジしていってほしい」と熱く呼び掛けました。

東芝に入社後,大型計算機開発の部署にいた溝口さんは時代の変遷から1970年代後半,「大型計算機に代わるデジタル新市場の創出が必要」と考え,ワープロ開発に着手。79年に完成した製品は漢字の文章を作成できるということで大きな反響を呼びましたが,重さ600キロ,価格は630万円とあくまで業務用でしかなかったといいます。その後,設計を根本から見直して改良に改良を重ね,85年には当時では衝撃的だった10万円を切るワープロ「RUPO」を商品化。個人の需要を呼び込み,最終的には販売台数が10万台に達する大ヒット商品となりました。溝口さんは「当時,部品メーカーなどから『製造原価を抑えることは絶対無理』と言われる中,挑戦しました。これは決して無茶なチャレンジではなかった。目標を掲げ,なんとか乗り越えたいという一心でした」と振り返りました。

この後「米国の研究員による論文にあった『電子文房具を個人が持ち運ぶ時代が来る』という一文に刺激を受け,ラップトップ,ノート型PCの開発に着手しました」と披露。いくつもの部品メーカーと知恵を絞り,工夫を凝らしながら1986年にラックトップ,そして89年に世界初のノート型PC「ダイナブック」を開発したと紹介しました。「ダイナブック」は86~2000年,世界市場でトップの売り上げを記録したといいます(93年は2位)。

これら大ヒット商品をつくり出す条件として溝口さんは

  1. 高い目標を掲げる
  2. マーケット側からの発想を大事にする
  3. リスクは進んで冒す
  4. 非常識ではない「破常識」と情熱を持つ
  5. スピード感を持って取り組む
  6. 優秀な人材を集め,ハードワークに耐える

-を挙げ,「常に知りたい,学びたいという意欲を持ち,チャレンジする気持ちを持ち続けてください」と締めくくりました。