伊藤博之KCGI教授がオンライン特別講義「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」

「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題したクリプトン・フューチャー・メディア代表取締役・伊藤博之KCGI教授のオンライン特別講義。(2022年1月14日)

「初音ミク」は2007年8月31日に誕生したバーチャルアイドルです。歌詞とメロディを入力すると音声合成で歌ってくれるソフトウェアであり,身長158センチ,体重42キロ,16歳の人気「キャラクター」です。国内外でライブコンサートが開催され,日本文化を世界に発信するクールジャパンの象徴的存在になっています。

伊藤教授は「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題した講義で,クリプトン社の事業を紹介したうえでコンピュータ・ミュージックの基礎を解説しました。そして「コンピュータにインストールして使うソフトウェア化された楽器のことをバーチャル・インスツルメント(仮想楽器)といいます。『初音ミク』は歌声のバーチャル・インスツルメント。ヤマハのボーカロイド技術を使って開発しました。当社がやるまで全くなかった試みで,キャラクターを付けて出しました」と説明しました。

キャラクター化が奏功し,音楽だけでなく「初音ミク」のイラストやCG,コスプレなどを創作してインターネットに投稿する人たちが次々に現れ,創作の連鎖が世界中に広がりました。伊藤教授は,「『初音ミク』をキャラクターとして使いたいという要望が非常に高くなり,権利をどうスムーズにクリアするかということに本社も取り組んでいかざるを得なくなりました」と明かし,権利処理のためライセンスを公開するとともに,コンテンツ投稿サイト「piapro(ピアプロ)」を開設して,創作が生まれやすい環境を整えた経緯なども詳しく述べました。

「初音ミク」は誕生から14年が経ち,大勢のクリエイターによる二次創作・三次創作の結果,歌や音声にとどまらず,ダンスや動画,コスプレ,フィギュアなどへとその表現方法が広がりました。ファッションやオペラ,ロボット,ゲーム,和太鼓,テレビの人気アニメキャラクターとのコラボレーションなどのほか,グッズ展開も拡大が続いています。伊藤教授は「コンテンツは,使えば使うほど価値が増える法則がある。いかにいろんな人に使ってもらうか,コラボレーションしていくかは,すごく大事なことだと思っています」と語りました。

コロナ禍にあっても「初音ミク」は活躍中です。公演やイベント出演がめじろ押しで,2013年から毎年開催されている3DCGライブと創作の楽しさを体感できる企画展のイベント「初音ミク『マジカルミライ2021』」は2021年10月22日〜24日に大阪市,11月5日〜7日に千葉市で開催されました。9月には,2年ぶりに京都南座で中村獅童さんと共演する「超歌舞伎」を上演しています。海外版マジカルミライともいえる「MIKU EXPO」は,2020年4月から5月にかけアメリカとカナダの12都市で公演予定でしたが,新型コロナの世界的感染拡大のため2度延期の後,中止に。しかし,2021年は「MIKU EXPO 2021 Online」として6月6日にオンライン開催,世界に配信されました。商品展開も相次いでおり,ソニーがワイヤレスイヤホンに「初音ミク コラボレーションモデル」を追加,ティアックは初音ミクデザインのBluetooth搭載ターンテーブルを2022年3月に発売します。明和電機は音符の形をした電子楽器の「初音ミク」バージョンを出しました。

伊藤氏は,2013年4月にKCGI教授に就任しました。同年秋には国際的な活動と技術革新が認められ,藍綬褒章を受章しています。KCGIとKCGには相互に授業を聴講できる仕組みがあります。KCGIのコンテンツビジネス関連を学ぶ学生だけでなく,KCGのアート・デザイン学系,デジタルゲーム学系,コンピュータサイエンス学系情報処理科IT声優コースなどコンテンツ関連の学生たちも,伊藤教授の取り組みから多くを学ぶことができます。