Ruby開発者・まつもとゆきひろ氏がITの未来を語る

ITの未来などについて語るプログラミング言語Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏
ITの未来などについて語るプログラミング言語Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏

KCGグループの創立50周年記念講演会の「コードの未来」は11月9日,京都コンピュータ学院京都駅前校大ホールで,プログラミング言語Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏(Rubyアソシエーション理事長)を講師に招いて開かれました。まつもと氏はRuby開発に至る話のほか,ITのトレンド・未来を予想。訪れた一般の方々や学生たちもとって,これからITが一層進化する中,どのような姿勢で臨んでいくべきかを考えさせられた内容でした。

Rubyの開発は1993年から始めたといいます。まつもと氏は「バブルが崩壊し,ソフトウェア会社に勤めていた私は,手掛けていたプロジェクトがキャンセルとなってしまい,たっぷり時間ができてしまいました。野望とか夢とかそのようなものは全くなく,暇だから言語を開発しようと思っただけです」と吐露。オープンソース化し,世界中の人たちとともに開発に至った背景を説明したうえで「一般公開したのは1995年。インターネットの普及で『ウェブサイトを作りたい』と思う一般の人が現れ始めたころと時期的に重なり,その時点で十分に完成された言語が既に存在しているという点で評価を受けました」と話しました。開発にあたっては「速度や機能の競争は無意味」と割り切り,「気持ちよさを追求する存在にしようと,他の言語との真っ向勝負は避けました」と付け加えました。

ITの足取りについては,ムーアの法則(Intel社の創設者の一人であるGordon Moore博士が1965年に経験則として提唱した「半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する」という法則)などの通り,コンピュータが超高性能・超低価格・超大量化,ネットワークが超高速化したと説明。「たとえば現在の『京(けい)』のようなスーパーコンピュータが,30年後にはポケットに入っているようになっているかもしれません」との例えを示し,今後もその流れは続くだろうとしながらも「技術の予測はある程度可能ですが,社会環境はどう変化するのか分かりません」と指摘しました。そのような中で,ITの世界を歩んでいこうとするためのキーワードとして▽リスクを下げる(撤退は素早く)▽過程を楽しむ(結果を追い求めるだけでなく,衝動に従ってエンジョイする)▽鶏口牛後(突出した分野を持ち,信頼される人間になる)-を挙げました。

さらには「社会を変える力はテクノロジー・ITであることに間違いはありません。将来的にはすべての産業がIT産業となるでしょう」とし,「情報を勉強しているみなさんの出番は増えるばかりです。ただ,コンピュータ自体は,問題解決はできない。それを役立つ方向に持っていくのは人間です。思い込みを打破し,何が真実なのかを常に追究する視点を持ちながら,ITのプロを目指してほしい」と呼び掛けました。

ITの未来などについて語るプログラミング言語Ruby開発者の まつもと ゆきひろ氏

創立50周年記念講演会「コードの未来」
http://kcg.edu/50th/events/コードの未来まつもとゆきひろ氏講演/