史上最大「アイソン」に思いはせ。渡部 国立天文台副台長ら彗星を語る

「歓迎 アイソン彗星」と題して講演する国立天文台副台長の渡部潤一氏
「歓迎 アイソン彗星」と題して講演する国立天文台副台長の渡部潤一氏

今年の11月末から12月初めにかけてやってくる,史上最大級の彗星といわれる「アイソン彗星」をテーマにしたKCGグループの創立50周年記念シンポジウム「歓迎 アイソン彗星」(天文教育普及研究会・NPO花山星空ネットワーク後援)が11月9日,国立天文台副台長の渡部潤一氏らをゲストに京都コンピュータ学院京都駅前校大ホールで開かれました。一般の方々が大勢聴講に訪れ,講演やパネルディスカッションを通じ,今年最大の「天文ショー」に思いをはせました。シンポジウムの模様は,札幌サテライトと東京サテライトにも京都の双方向授業配信システムにより中継されました。

第1部渡部氏による講演では,昨年の金環日食や金星の日面通過,今年のロシア・チェリアビンスクの隕石落下や小惑星(2012DA14)の地球接近といった最近起こった天文の話題が取り上げられました。続いて彗星について触れ,「これまで彗星の訪れは,姿が不気味に見えたのか災いを招く“凶兆”ととられていたケースが多かったのですが,一方で稲穂をイメージさせるため豊作につながるのではないかと“瑞兆”とされたこともあるようです」と前置きし,「彗星は1年に数十個から100個ほどやってきますが,肉眼で見られるのはまれ」と解説。池谷・関彗星(1965年),百武彗星(1996年),ヘールボップ彗星(1997年),マックノート彗星(2007年=南半球のみ)など,観望ができた彗星について画像を使って紹介されました。

アイソン彗星については「太陽をかすめる彗星としては史上最大級」とし,「12月初旬の東の空に,金星並みの明るさで見られるでしょう。天候に恵まれることを祈りながら,長い尾を引く姿を楽しみにしていてください」と呼び掛けました。

休憩をはさんで第2部では渡部氏と,京都市立洛陽工業高校の有本淳一氏,子ども達に星を観せる会の茶木恵子氏,京都情報大学院大学教授の向井正氏・作花一志氏の5人のパネリストによるパネルディスカッションを開催。天文教育普及研究会の一員としても活動する有本氏は,ハレー彗星の出現で天文に興味を持ち始めたとし「アイソン彗星の観望を学校教育現場で対応していきたい」と強調。茶木氏は「星の間を縫うように現れた百武彗星を見たとき感動して鳥肌が立ち,ハートに火をつけられました」とのエピソードを披露。向井氏は「想い出の彗星」としてハレー彗星を取り上げ,当時の1985年に日本が探査計画で大きな貢献をしたことを説明。作花氏は「古文書天文学」の視点から,古い文献に記されている数々の彗星について,「想い出の彗星」としてはウエスト彗星(1976年)を紹介しました。会場の質問ではまず,「盆地の多い京都でアイソン彗星を観望する方法」,さらに東京サテライトからは「東京で観望する方法」が出され,渡部氏は「なるべく東の地平線が見える所を探してください。見られるのは日の出前なので公共交通機関は動いていないし,寒い時期でもあり防寒も必要。準備を万全にして世紀の天文ショーを楽しみましょう」と話しました。最近の観測結果によるとアイソン彗星は当初の期待通りほどには明るくなっていないそうで,天文ファンをヤキモキさせているようですが,来月初には長い尾を引く姿を見せてくれると期待したいものです。

この後,パネリストと聴講者が集まっての茶話会も開かれ,天文の話に花を咲かせました

世紀の天文ショーについて思いをはせたパネルディスカッション
世紀の天文ショーについて思いをはせたパネルディスカッション

創立50周年記念講演会&シンポジウム 「歓迎アイソン彗星」
http://kcg.edu/50th/events/歓迎アイソン彗星渡部潤一講演/