伊藤博之KCGI教授が特別講義「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」

「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題したクリプトン・フューチャー・メディア代表取締役・伊藤博之KCGI教授の特別講義(2023年12月8日,KCG京都駅前校・KCGI京都駅前サテライト6階大ホール)
「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題したクリプトン・フューチャー・メディア代表取締役・伊藤博之KCGI教授の特別講義(2023年12月8日,KCG京都駅前校・KCGI京都駅前サテライト6階大ホール)

世界中で人気のバーチャルシンガー「初音ミク」の生みの親で,クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(本社札幌市,創立1995年)代表取締役の伊藤博之・京都情報大学院大学(KCGI)教授による特別講義が2023年12月8日(金),京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校・KCGI京都駅前サテライト6階大ホールでの対面とインターネットを通じたライブ配信とのハイブリッド形式で実施されました。学生たちはおのおの希望する場所で,コンテンツビジネス第一人者の講義に聴き入りました。伊藤教授は「初音ミク」誕生の経緯や成長過程,音声技術・ライブ技術への先進的な取り組みや国内外での活躍について映像を交え解説しました。

「初音ミク」は2007年8月31日に誕生したバーチャルアイドルです。歌詞とメロディを入力すると音声合成で歌ってくれるソフトウェアであり,「身長158センチ,体重42キロ,16歳」の人気キャラクター。得意ジャンルはアイドルポップスとダンス系ポップスです。国内外でライブコンサートが開催され,日本文化を世界に発信するクールジャパンの象徴的存在になっています。

伊藤教授は「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題した講義で,クリプトン社の事業を紹介したうえで音楽とテクノロジーの関係と歴史,コンピュータ・ミュージックについて解説しました。そして「バーチャル・インスツルメントは楽器の音色をパソコンで再現するソフトウェア。人の歌声もバーチャル・インスツルメントにしてみようと取り組み,ヤマハの歌声合成技術を使って当社が『初音ミク』を開発しました。キャラクターを付けようという試みはだれもやっていなかった」と説明しました。

キャラクター化が奏功し,音楽だけでなく「初音ミク」のイラストやCG,コスプレなどを創作してインターネットに投稿する人たちが次々に現れ,創作の連鎖が世界中に拡大しました。伊藤教授は「キャラクターが認知されることによって創作活動が連鎖的に広がっていくけど,権利の問題が生じる。煩雑な権利クリアランス作業を簡単にしてあげないといけないと考えた」と,クリプトン社が持つ原著作物のライセンスを公開したことを説明。さらに「ファンが作った創作物を他のファンが使いたいときのために、『piapro(ピアプロ)』という投稿サイトを作りました」と,創作が生まれやすい環境を整えた経緯と仕組みを解説しました。

「初音ミク」は誕生から16年がたち,大勢のクリエイターによる二次創作・三次創作の結果,歌や音声にとどまらず,ダンスや動画,コスプレ,フィギュアなどへと表現形態は多様化しました。伊藤教授は「無断使用の連鎖でなく,共感の連鎖,ありがとうの連鎖が具体的に見えるようなものとしてコンテストも開催しています」と,各地で開催する取り組みを説明。また「(創作の連鎖によって)コンテンツの価値が増えていくと考えています。いろんなコラボレーションが『初音ミク』の価値,『初音ミク』を使ったクリエイターの価値を上げていく」との考えを示し,ファッションやクラシック音楽会,ゲーム,和太鼓,歌舞伎などでのコラボレーションを紹介しました。

コロナ情勢の変化とともに「初音ミク」活躍の場がさらに増えています。公演やイベント出演はめじろ押しで,毎年開催されている3DCGライブと創作の楽しさを体感できる企画展のイベントは,2023年は「初音ミク『マジカルミライ2023』」として8月に大阪市,9月は千葉市で催されました。2024年は東京,福岡,大阪で予定しています。中村獅童さんと共演する「超歌舞伎」は2016年の初演以来初めて東京・東銀座の歌舞伎座での公演が実現。2023年12月3日から26日まで「十二月大歌舞伎」の第一部で「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」を上演しています。東京・渋谷のNHKホールでは「初音ミク×鼓童スペシャルライブ2023~結~」を6月に開催,NHK-BSで放送されました。海外版マジカルミライともいえる「MIKU EXPO」は,2020年のコロナ感染拡大以降はツアーを見合わせ,2023年はVRとオンラインの「MIKU EXPO 2023 VR」を11月に開催しましたが,2024年は海外リアルコンサートを再開し4月から5月にかけ「HATSUNE MIKU EXPO 2024 North America」を北米16都市で行うことが決まっています。商品展開も相次いでいて,2023年は初音ミク誕生16周年を記念したコラボ商品が続々。セイコーは「初音ミク×SEIKO Happy 16th Birthdayウォッチ」を7月に,ソニーが「ウォークマン『初音ミク』16周年記念コラボレーションモデル」を8月に発売。ヤマハは初音ミク16周年記念コラボ商品の「ヤマハ ボーカロイドキーボード」「ヤマハ ギタレレ」「スタインバーグUSBオーディオインターフェース」の購入予約受け付けを10月に開始しました。

伊藤氏は,2013年4月にKCGI教授に就任しました。同年秋には国際的な活動と技術革新が認められ,藍綬褒章を受章しています。KCGIとKCGには相互に授業を聴講できる仕組みがあります。KCGIのコンテンツビジネス関連を学ぶ学生だけでなく,KCGのアート・デザイン学系,デジタルゲーム学系,コンピュータサイエンス学系情報処理科IT声優コースなどコンテンツ関連の学生たちも,伊藤教授の取り組みから多くを学ぶことができます。

KCGI,KCG,京都自動車専門学校のKCGグループは新型コロナウイルスの感染状況を総合的に判断し,2023年度秋学期は,授業・講義を原則としてハイブリッド形式(学生は教室またはオンラインのいずれでも受講が可能)とし,学校行事はサイバースペースも併用して実施しています。

伊藤教授は,バーチャルアイドル「初音ミク」誕生の経緯や成長過程,音声技術への取り組み,国内外での活躍について映像を交え解説しました。
伊藤教授は,バーチャルアイドル「初音ミク」誕生の経緯や成長過程,音声技術への取り組み,国内外での活躍について映像を交え解説しました。